指月ノ会1「仏教と私たち」ダイジェスト

TOPICS

「指月(しげつ)ノ会」をオンラインにて開催

 
2025年8月20日、「指月(しげつ)ノ会」をオンラインにて開催しました。
 
「指月ノ会」第一回のテーマは「仏教と私たち」。
今回の出演者は仏教学者の末木文美士さん、石山寺座主の鷲尾龍華さん、三井寺執事の福家俊孝さん、観音ガールの對馬佳菜子さん、近江ARSチェアマンで中山事務所代表の中山雅文さん。ナビゲートは近江ARSプロデューサーで百間代表の和泉佳奈子さん。
 
全体の構成は前半に鷲尾さんから石山寺のお盆、日本仏教と原始仏教のギャップについて、末木さんからご自身の仏教との関わりや捉え方について話され、後半は福家さん、對馬さん、中山さんによる三者三様の仏教との関わりや問いが話された。
宗教、学問、企業、文化、地域と異なる背景をもつ顔ぶれの出演者によって多様な仏教との関わりが話された。
 
冒頭、石山寺座主の鷲尾龍華さんが「指月ノ会」への思いを話し始めた。
 
「指月」という言葉は、龍樹の「指月の譬え(たとえ)」に由来する。
月(真理)を指す指(教え)にとらわれてはならないという戒めだが、後世では真理に至るための「教え」の重要性も肯定されるようになったという。
 
鷲尾さんは、2024年夏に旅立った松岡正剛さんが病床で「今の仏教からは何も生まれていない」と言っていたと、近江ARSプロデューサーの和泉さんから聞いて、「非常にショッキングな言葉だった。何も出てこなかった事は無いんじゃないか」と思ったと語る。
 
そもそも仏教について語り合う機会が少ないのではないか。
私たちがいっている仏教とは何なのか。
仏教をカジュアルに、本音で語り合う会を持ちたい。
そう思ったことが指月ノ会の始まりにあったとのこと。
話題は石山寺でのお盆へ。
石山寺は祈願寺のため、檀家をもつ寺院のお盆とは少し異なる。
8月9日に千日会という行事があり、この日に参拝すると千日お参りしたのと同じ功徳が得られるという1年で一番のご縁が結べる日だ。
境内に吊るされている提灯の下に、文字が書かれ、所々に切れ込みの入った札が揺れている。
「塔婆(とうば)」といい、仏さまの骨を祀った仏塔、仏舎利であり、その形を模した紙に先祖の名前を書いて追善供養をするもの。
切れ込みは五大というこの世界を構成している「地水火風空」というものの形を表している。
この塔婆は最後、精霊船(しょうりょうぶね)に乗せられ、お焚き上げされる。
その昔は、瀬田川に流していたという。
続いて、石山寺にある大きな山門とは別の門が画面に映し出された。
お寺の中で亡くなった人がいると、この「不浄門」から出ていくが、仏教で死を穢れとみることに疑問をもった鷲尾さんの経験が語られた。
日本の仏教は、古来の神の崇拝と一体化し、死を穢れとするのは、日本の神に対する向き合い方からくるものであると知り、腑に落ちたという。
その一方で、ブッダの教えと日本の宗派修学との間でギャップを感じていると話す。
仏教が生まれたインドから地理的に離れ、時代も進んでいるなかで、仏教も時代に合わせて変わってきたはずではないか。
その距離を埋めていくことが大事ではないかと鷲尾さんは考える。
 
「私は自分が関わっているお寺や仏教が非常に好きで、誇りを持って関わっている意識がありますが、自分がそうやって関わっているという意識を見直す必要もあるのではないかと思っています。また信心というものが一体独りよがりになっていないか、人のためになるのか、そういったことを今一度考える機会になれば。」とその意欲を語り、ぜひ参加者からのお声も聞かせていただきたいと締め括った。
 

還生の会でもお馴染みの仏教学者の末木文美士さん。
自らを近江ARSの若手メンバーが出演する本会の「応援団」と称し、出演者を和ませながら自身の仏教との関わり合い話された。
 
京都に住んでいた頃、近所にあった餅屋がお盆の最終日に「信濃の善光寺で説法を聞いて帰るお精霊さんのため」と早朝から開店する話や、自身の講演会の聴講者が弘法大師から水をいただいた話など、心あたたまる仏教的エピソードを交えながら、自身の共感できる宗教的なものと、そうではないものについて語られた。
そこには「歴史を持った文化の中で語られてくるかどうか」と指摘し、「文化的な伝統が生きたなかで仏教は生き、意味をもっていくのではないか。仏教を文化といわば一体化して見ている」とご自身の捉え方について振り返った。
 

「仏を信じるというより信じたい気持ちが大きくなっている」と語り始めた三井寺執事の福家俊孝さん。
「仏教は、たぶん、現代の人たちの心にあまり刺さってない」と切り込み、7月末にバチカンへ行ったとき、全世界から約50万人の若者が集うカトリックの行事を目の当たりにし、日本の寺の現状との差に衝撃を受けた。
松岡さんが言うように「今の仏教から何も生まれていない」ように感じたと話した。
 
仏像を好きになることで仏教にふれるようになったと話す観音ガールの對馬佳菜子さん。
仏教を面白いと感じ、好きではあるが、「仏教を信仰しているのか」と問われると答えられなかった経験を話し、「信じるかどうかは自覚するものか、他者評価されるものなのか。」と疑問に感じていると話した。
 
資本主義の中で生きてきたからこそ、その違和感を仏教から問い直そうとする近江ARSチェアマンの中山雅文さん。
「お金が増えることがすべて一番良いことだという価値観が根付いているなかで、ビジネスをしているとすごく違和感を感じている。今のグローバル資本主義の中に感じる違和感を解消するヒントが日本の仏教にあるのではないか。ビジネスの中に日本仏教の考え方をどのように入れ込めるかということを考えたい」と話した。
 
それぞれが話し終え、フリートークへ。
ナビゲーターの和泉佳奈子さんも交えて、お寺の経済事情と葛藤や宗教法人と税金をめぐる動向、経営者や富裕者がお金をどう使うのかなど、仏教視点で、あたたかくも真剣に交わし合いがされた。
 
 
◎出演
末木文美士(仏教学者)
鷲尾龍華(石山寺座主)
福家俊孝(三井寺執事)
對馬佳菜子(観音ガール)
中山雅文(中山事務所代表)
 
◎ナビゲーター
和泉佳奈子(百間代表)
 
◎主催
近江ARS(アルス)
https://arscombinatoria.jp/omi
 
◎プロデュース
百間
 

CONTACT

お問い合わせ内容を入力し、
プライバシーポリシーをご確認の上、
送信ボタンより送信してください。

プライバシーポリシー