12月19日 末木文美士氏による第8回「還生の会」申込開始
「もう一つの日本の様式」をめぐって歴史・文化・自然・技術・芸術・芸能をまたぐとき、「近江ARS」がさいしょに注目したテーマは「仏教」でした。
2022年5月にスタートした近江ARS「還生(げんしょう)の会」(全8回)は、年の瀬が押し迫る12月19日(木)に最終回を迎えます。8回目のテーマは「大乗仏教と菩薩の倫理―他者とどう関わるか」。場所は、近江ARSのトポス(場)のひとつ滋賀県大津市の三井寺です。
仏教の学び直しに格別な思いを注いだ総合監修の松岡正剛(2024年8月没)さんが近江ARSを託した21世紀の三井寺の長吏、福家俊彦さんの語りから始まります。三井寺の「別所」の話ではじまった還生の会は、回を重ねることで近江ARSにどのような変化を及ぼしたのか。思考の拠点を「近江ARS」に動かしたとき、福家さんに見える「別日本」(『別日本で、いい。』より)の景色は、いかに。
恒例の「末木文美士の仏教レクチャー」では、最終回に「菩薩論」をもってこられたその意図を抜き型に、日本仏教を考える最新の見方に触れます。中世の仏教から、冥顕(みょうけん)の構図を取り出した末木さんは、還生の会で一貫して「顕(けん)」と「冥(みょう)」を一貫して語り続けました。「顕」は人間の理解の及ぶ世界であり、公共性の領域にほぼ重なるところ。「冥」とは理解の及ばない不可思議な領域、他者の領域です。どうすれば死者を語れるのか。どこが菩薩とつながるのか。キーワードは「他者」です。
大詰めの鼎談は、さらに自由な議論を交わすべく各方面から論客をお招きします。まとめるのではなく、次へ次へと、新たな語りを繋げます。外交官としての国際経験が豊かで、宗教・哲学にも深い造形を持たれている著述家の佐藤優さん、明治の神仏分離と廃仏毀釈により苦悩した近代仏教をあらゆる角度から表現された大谷栄一さん、そして「新しい祈りの場」としての寺の役割に寄り添う山寺座主の鷲尾龍華さんほか多数の皆様です。
以上、おおよそ4時間ほどのプログラムとなります。松岡正剛直伝のおもてなし衆も、趣向を凝らしてお待ちしております。三井寺執事の福家俊孝さん、叶 匠壽庵代表の芝田冬樹さん、冨田酒造の冨田泰伸さん、六角屋の三浦史朗さんはじめ近江ARS一同が一期一会の体験をお届けします。
近江ARSチェアマン 中山雅文 より異なるルールを持った国家という他者がぶつかり、個人間の格差が広がる今、還生の会では目に見えないこと、言葉にできないことをどう捉えるかを考えてきました。仏教の話でよく耳にする「法華経」は、すべてのブディズムの教えはことごとく入っているという見方から「諸経の王」と言われます。日本でもっとも広く受容され信仰されてきましたが、その最初の一滴は最澄の法華一乗への思いから始まりました。小乗(修行した者だけが覚れる)と大乗(誰でも覚れる)を「菩薩行」が繋ぐのだと提示したのが法華経なのです。菩薩とは、仏になる資格を持っているのに、衆生である他者のために待っている、他者なしには存在しえないのです。末木文美士氏は言葉を発することのできない死者こそ究極の他者であると考えられています。日本で変化した仏教を通じて、今の時代と向き合えるものを持ち帰っていただければ幸いです。
近江ARS 第8回「還生の会」の詳細
◎日時
令和6年12月19日(木) 13時30分 ~ 18時頃 (受付開始13時)
◎テーマ
「大乗仏教と菩薩の倫理―他者とどう関わるか」
<はじめに> 和泉佳奈子「還生の会をふりかえって」
<第1部>伝え|福家俊彦「別所から別日本へ」
<第2部>語り|末木文美士「大乗仏教と菩薩の倫理」
<第3部>巡り|観音堂の観覧
<第4部>交わし|佐藤優、大谷栄一、末木文美士、福家俊彦、鷲尾龍華他
<おわりに>名残
◎場所
三井寺「観音堂」|〒520-0036滋賀県大津市園城寺町246
◎出演
末木文美士 未来哲学研究所所長
福家俊彦 三井寺長吏
佐藤優 作家・元外交官
大谷栄一 宗教社会学者
鷲尾龍華 石山寺座主
◎進行
和泉佳奈子 近江ARSプロデューサー
◎定員
現地参加 約70名
◎参加費
<第1・2・3・4部>現地参加費 13,000円(税込)
*HYAKKEN MARKETにてお申し込みをお願いします。
◎推薦図書
末木文美士著『日本仏教入門』 角川選書
末木文美士著『日本宗教史』 岩波新書
末木文美士著『日本思想史』 岩波新書
末木文美士著『死者と菩薩の倫理学 冥顕の哲学1』 ぷねうま舎
松岡正剛著『仏教の源流』角川ソフィア文庫
松岡正剛著『戒・浄土・禅』角川ソフィア文庫
◎松岡正剛千夜千冊
◎主催
◎お問合せ
近江ARS本部 滋賀県大津市栗林町3-1中山事務所内 中山雅文
近江ARS総局 東京都千代田区九段南2-2-8松岡九段ビル百間内 和泉佳奈子
omi@arscombinatoria.jp (近江 ARS 担当 中山・和泉)
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https://arscombinatoria.jp/omi
<還生の会>とは?
「還生の会」という名前は、近江ARSの創始者・松岡正剛が命名しました。バーチャルに行きながら、もう一度リアルに戻って往生するという意味が込められています。